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日本の住宅業界の実状と今後の政策

コラム

2024-01-20

こんちには!新潟県十日町市・長岡市・南魚沼市・小千谷市・湯沢町・津南町で住宅の新築やリフォーム・規格住宅から注文住宅など「家づくりに関わること」をお手伝いさせて頂いている、皐工務店の澤口です。

家づくりの前に知っておきたい基礎知識として今回は日本の住宅業界の実状について説明してまいります。

日本と各国の住宅寿命の違い

2008年時点の調査データで総務省の土地統計調査によればイギリスの平均住宅寿命は80.6年。アメリカが66.6年、日本が32.1年とされています。
この数値は各国の新築住宅で建ててからどれくらいの期間 持つのか。常識的に住めるようなクオリティが高いのかという年数になります。
ただ、これらの数値は解体した建物の平均寿命から算出されたもので、英国では築200〜300年という住宅も多くあるので、おそらく実際の欧米の築年数はこれよりも長いと思われます。
イギリスでは日本の倍近い平均寿命となっていますが、日本では住宅ローンが30年とか35年で組む方多い中、ローン完済時には建替えの必要がある言うことになります。
2008年と少し古いデータになりますが、国としても住宅の性能を向上させるような政策を推進しており、現在の住まいがすべて32年の寿命といいませんが、まだまだ32年程度の耐久性しかない住宅の供給している会社もあるのが現実となっています。

「欧米」と「日本」のライフスタイルの違い

日本と欧米でこのような差が生まれた理由は、ライフスタイルの違いです。欧米では親子の同居は少なく、たとえば親は子供達が成長したら家を譲り、自分たちはマンションなどに移り住み節目に住まいを移動する文化である一方、日本では多くの親が子供達と同居します。特に地方では3世代同居なども多いかと思います。慣れしたしんだ土地に住み続けるという土着文化も起因していると言われています。
すると、それまで住んでいた家は家族の人数やライフスタイルの変化でなにかと不都合が生まれ、更地にして新しく二世帯住宅を作ろうか……ということになるのです。ちょうど世代が交代する30年前後で家が取り壊されるわけです。
さらに、古い日本の住宅は襖や障子で仕切られたフレキシブルな家であったが、壁で仕切られた個室のある家に変わったことも取り壊しが進む理由になっているという。
細かく仕切られた家を二世帯用にフルリフォームすると費用が高額になり、それなら建替えようかとなるわけです。

200年住宅ビジョン

このようなことから国としても地球環境問題・廃棄物問題が深刻化する中で、20世紀の「つくっては壊す」フロー消費型社会から「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック型社会への転換を急務とし平成19年5月に200年住宅ビジョンを提言しました。
循環型社会を考えると例えば40年育った樹木は40年以上利用しないと成り立ちません。しかし40年育った樹木の内30%程度しか材料としては使用できず、残りは燃料など短期での消費となり40年材の30%を使いきると130年使用しなければ循環しない計算になります。
40年÷0.3=130年

梁材など太い材料には育成に60年かかり
60年÷0.3=200年

循環型社会や環境問題を考えると住宅は200年使用しないといけないことになります。
現在では長期優良住宅という制度を創設し補助金など活用し推進しています。


長期優良住宅の現状


長期優良住宅の認定を受けるには一定の水準、耐震性能、断熱性能、維持管理性能、住宅履歴の作成などを満たす事が必要であり、認定を受けると住宅購入の際に税金の控除や優遇装置を受けることができます。
ですが、令和4年度の戸建て新築数248,129戸のうち長期優良認定住宅は115,509戸と半分に満たないのが現状です。

なぜ、長期優良住宅が普及しないのか?
長期優良住宅に認定された戸建て住宅は令和2年から令和4年の三年間でみても平均100,000戸程度とほぼ横ばいとなっています。
長期優良住宅が普及しない理由はいくつかあり、認定を受けるには以下の基準を満たす事が必要となります。

以上が長期優良住宅の認定を受けるために必要な基準となるのですが、普及しない理由の前に認定を受けるために必要な手続きがあります。
抜粋して説明しますと

耐震性の認可 
図面の作成→使用する構造材(木材・補強金物)の選定→構造計算→審査機関の認定→耐震等級の取得→耐震性の認可→確認申請→着工

省エネルギー性の認可
図面の作成→使用するサッシ・断熱材・換気設備等の選定→温熱計算→審査機関の認定→省エネルギー性の認可→確認申請→着工

となります。が現状の長期優良住宅でない住宅は

耐震性 
図面の作成→使用する構造材(木材・補強金物)の選定→壁量計算→確認申請→着工(耐震性能は耐震等級相当と記載)

省エネルギー性の認可 
図面の作成→使用するサッシ・断熱材・換気設備等の選定→確認申請→着工(省エネルギー等級相当と記載)


以上のように長期優良住宅は構造計算や温熱計算から認定など通常より工程が増えていきます。
ネックになっているのはズバリ建設費用の増加と着工までの事務作業の増加。それに加え、建築会社の能力・知識不足やローコスト住宅の台頭・長期に渡っての点検メンテナンスの不備が考えられます。

建設費用の増加


なぜ、長期優良住宅の認定をうけるのに費用が増加するのか?
耐震等級を取得する際には構造計算が必須となります。構造計算には許容応力度計算と壁量計算とありますが、構造計算を行うには建物の大きさによりますが、30坪程度の住宅だと30万前後の費用がかかります。
原状の4号特例の住宅(*抜粋 木造2階建て以下かつ床面積が500㎡以下のもの)は構造耐力の審査を省略できる事になっており、同じ大きさの住宅を建てる場合に長期優良住宅の方が構造計算費用がプラスされることになります。
また、構造計算を行うことで、基礎の鉄筋量や構造材の梁材が太くなったり補強金具が増えたりと材料費の増加とそれに伴い人件費の増加します。

省エネルギー性能に関しても、断熱性能を表すUA値を取得するために高性能な断熱材やサッシを選ぶ必要があり、耐震等級同様に材料費・人件費が増加します。

事務作業の増加


長期優良住宅以外では今までの経験や実績から簡易計算により性能表記を耐震等級2相当と言った表記でよいので作業も簡略化でき着工までのスピードが速いですが、長期優良住宅は耐震等級や省エネルギー性能を取得する際には上記に記載したように多くの作業が必要となります。作業が必要な分人件費も当然増加します。


建設会社の能力・知識不足


ハウスメーカーや設計事務所、工務店など多くの業態の建設会社が存在しており、建主もホームページなどで自分に合った建設会社を選ぶ事ができる時代になりました。ですが、建設業界では元請・下請含め、まだまだアナログ作業のところは多く存在しています。
高齢の経営者の建設会社さんも多数おられ、インターネット環境がないもしくはメールやPC作業が苦手と言った会社も実は存在しています。
インターネット環境がない事やPC作業ができない事の悪い理由は長期優良住宅の認定や作業などの多くがインターネットで出来る時代でありながら、必要書類を直筆、郵送とアナログ作業で行っているという事です。
インターネットであれば24時間いつでも作業できるの対して、アナログなやり方では申請に必要な書類の荷受けなど日中でしか行えない事もあります。そうすると慣れない方は何度も足を運んだり、郵送費がかさんだりし結局めんどくさくなり「うちは長期優良住宅はしないとか」「長期優良住宅は必要ない」と言った具合になっていくのです。


知識不足に関しては特に省エネルギー性の断熱性能に関する部分が多く断熱性能のUA値が分からない もしくは「昔にくらべたら断熱材が入っているだけで十分暖かい家だから」と安易な考えの建設会社が一定数 存在するという事です。
省エネルギー性は断熱等級4から断熱等級5の新設 ZEH基準や今後HEAT20など、この数十年でどんどん刷新されています。
断熱等級が高ければ、今日の戦争の影響などによる燃料費の高騰から日々の冷暖房費の削減につながる事や、ヒートショックによる住宅内で死亡につながる事故を防ぐ事もできます。耐震等級を取得することで地震保険が割引になる事など付随するメリットはたくさんあります。そのメリットをすべてお話する事は私も自信がありませんが、建設会社は私も含め日々勉強しなければいけません。
このような能力・知識不足も長期優良住宅が普及しない一つの理由となります。

ローコスト住宅の台頭


ローコスト住宅が始まった年は定かではありませんが、2000年前後と言われています。当時の住宅業界は建設費が高すぎるということからローコスト住宅が一気に増えはじめました。
背景には日本の労働者の給与が1989年からほぼ横ばいとなっている事が主な要因といわれています。
ゼロ金利政策により住宅ローンの金利も低いため住宅購入者にとって建設費の安いローコスト住宅は時代にあった住宅となりました。
ローコスト住宅の発祥当時は安かろう悪かろうといった評判もありましたが、現在では高性能なローコスト住宅会社も増えてきているようです。
ですが、まだまだ長期優良住宅の基準を満たす住宅会社は少ないかと思います。

そこで、国は長期優良住宅を増やすための今後の政策として「省エネ基準適合義務化」と「4号特例の見直し」を発表しました。
詳細は別のコラムでお話しますが、
簡単に説明すると長期優良住宅の認定を取得するしないにかかわらず、ハウスメーカー・ローコスト住宅・工務店問わず、すべての住宅の耐震性と省エネ性を長期優良住宅水準にしなければいけないという事です。

点検メンテンナスの不備


住宅を建設後は各社の定めた年数で定期的に点検を行う会社やそうでない会社もあり、バラつきがあります。またコロナ禍の影響により建設会社の倒産も相次いでおり、元々は定期点検を行っていたが倒産してしまい定期点検が行われなくなったり 人手不足により定期点検に回れないといった実状があります。そもそも瑕疵担保保険により完成から10年間は構造や雨漏りに関しては依頼した建設会社が倒産・廃業したとしても修繕は行われますが、特に屋根や外壁などは20年前後から劣化が目立ちはじめます。企業の平均寿命は34.1年と言われ26%の企業が20年以内倒産・廃業しています。すると屋根や外壁のメンテナンスが必要な20年の節目には26%の企業が存在していないといことになります。また、昨今の住宅ローンが30年35年40年と長期になりメンテナンスの時期にまだ住宅ローンが多くの残っていたり、子供の進学のタイミングと重なりメンテナンス費用を捻出する事が難しいのも実情です。現在では建設会社から委託された点検専門会社もあり、点検に関しては各社改善する余地はありますが、メンテンナンスにかかる費用に関しては建主の資金次第なので、なかなか国の目指す住宅の長期優良化が進まない一つの要因ではないでしょうか?

家を建てる時は誰しも小さい家より大きな家が欲しいかと思いますが、大きければメンテナンス時の工事費用も当然多くなります。夢のマイホームで建てるまでは気持ちも大きくなりますが、将来のメンテンナンスも含めた建物の規模や資金計画が必要ではないでしょうか?

まとめ


国としては、これからの住宅が性能が担保されることにより将来の中古住宅の有効活用でき循環型社会になる事を目標としていますが、
住宅購入者にとってはどこの建設会社に依頼しても性能が担保できる安心感を得られる反面、住宅購入価格の高騰といったデメリットもあります。

住宅購入を考えている方は以上の事をふまえて購入前の資金計画を念入りに行い。後悔のないよう、ご自邸を長く大事に使っていただき循環型社会の一助になっていただれば幸いです。
次回は住宅業界の今後の政策について詳しく説明してまいります。

皐工務店の記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

弊社は、新築住宅の施工販売からリフォーム工事までお住いに関わることをお手伝い
させて頂いています。
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